2020年6月28日日曜日

【シリーズ妄想馬鹿列車③】北海道新幹線「旭川開業」並行在来線計画 その1

「通勤電車の座席考」の途中だがまたここで途中下車である。
「新春初夢企画」で北海道新幹線の旭川延伸計画について勝手に妄想したが、自粛ばかりで妄想し放題だったので、急に並行在来線のことが心配になってきた。(大きなお世話というか、お節介な話であるが)
そこで今回はフル規格で札幌旭川間が新幹線開業した際の函館本線・札幌〜旭川間の並行在来線をどうするかを考えてみた。あわせて各駅から接続する在来線の存続についても考察する。


ではまず並行在来線区間からはじめよう。現在のスキームでは札幌から旭川までの在来線区間は基本的にJRから切り離されるはずなので、在来線を残すためには第3セクターとして経営を分離することになる。
問題は果たしてこの区間で3セク鉄道の経営が成り立つかという一点に尽きる。さっそく現状と沿線環境を考慮しながら今回も勝手に妄想していこう。

★函館本線 札幌〜岩見沢間★

711系が最後の活躍をしていた2014年夏の岩見沢駅で
札幌から約40kmに位置する岩見沢までは普通列車でおおむね40分ほどの所要時間で到達する。この岩見沢までは事実上札幌市の広域都市圏であり通勤通学客も多い。2018年にJR北海道が発表したこの区間の輸送密度は42926(人/キロ/日)だった。これは函館線札幌・小樽間とほぼ同じレベルだ。つまり小樽から岩見沢までが札幌の通勤都市圏ともいえる。特に途中の江別までは通勤時間帯は10分から15分間隔、日中でも1時間あたり4本の列車が札幌との間を結んでおり、完全な都市型路線として機能している。さらに通勤時間帯にはさらに札幌寄りの厚別折り返しの列車もあり、このぐらいの利用者がいれば相当な収入が見込めそうだ。

<この区間は切り離されるのか?>

ただこれでちょっと一安心、とはいかない。ここで新たな問題が生じる。この区間に関して言えばこのように一定の収入が見込めるので、岩見沢までは結局JR北海道による経営が継続する可能性が高いということになる。
札幌・岩見沢間を利用する人たちや沿線自治体にとっては朗報(と言えるのか?)だが、切り離される第3セクター鉄道側としては収入が見込める数少ない区間をJRにもって行かれる(もともと持ち主ですが。。)のはつらい。場合によっては札幌・江別間のみがJRでのこり江別以北が切り離されるということも考えられるが、いずれにしてもこれはかなりのピンチである。
2016年まで運行していた旭川〜新千歳空港直通の特急スーパーカムイ
新幹線開通後はUシートを組み込んだ岩見沢〜新千歳空港直通快速の運転復活もありか

★函館本線 岩見沢〜旭川間★

ということで結局並行在来線で切り離されるのはこの区間となる可能性が高い。財津一夫風に言えば「キビシ〜」のである。今回はこの最も厳しい想定で考察する。
で、その岩見沢〜旭川間の輸送密度は先ほどと同じ2018年度で見ると8237(人/キロ/日)だ。札幌・岩見沢間と比較すると1/4にも満たない。実際に運行系統は岩見沢でほぼ終日分離されている。それも現在の特急列車の利用者を含めてのこの数字だ。
いまでも特急だのみの超ローカル線といってもいい岩見沢以北の独立経営は前途多難だ。
そうはいってもそこは「馬鹿列車の妄想」である。現実はともかく、できる限り前向きに考えてみたい。

特急停車駅の砂川駅も今では夜間は無人となり、特急といえどもこの時間帯は特急の車掌が集札業務を行う

<ではどうにかならんのか?>

この実績では旅客輸送だけで経営を維持できるかといえば極めて厳しいところだが、ただ函館線はこの区間も含めて貨物列車が結構な本数走っている。2020年3月時点のダイヤを見てみると並行在来線となることが想定される区間では道東・富良野方面への貨物列車を含めて上下各8本程度が運転されている。逆に言えばそう簡単に廃止できない区間でもある。
収入的には限られているもののJR貨物からの一定の安定収入は見込めるはずだ。すでに第3セクター化された「道南いさりび鉄道」の輸送密度はわずか512だがそれでもどうにか運営をしていることをみれば、貨物列車が走っていればどうにかなる感じはする。ただし本数が違う上にこの先どうなるかこのコロナの時代、かなり不透明ではある。
とはいってもどうにかして在来線も維持するための方策を考えてみる。
春の江部乙付近を走る721系3連の普通列車 3セク後を想定すればいささか輸送力が過剰だ

<電化設備は放棄するしかない>

まず輸送容量が限られている中では電車で旅客列車を運転するのはいささか無理がある。少しでも運行コストを抑えるために、岩見沢・旭川間は電車での運転をあきらめるしかなかろう。そもそもすでにこの区間ではわずかではあるがディーゼルカーによるワンマン運転の普通列車が走っている。
何より特急が走らなくなるということは、多少普通列車の速度が今より遅くなっても優等列車への影響を気にする必要がなくなるので電車にこだわる必要もない。何よりこの程度の輸送量しかない普通列車だけのために電化設備を維持するのは経済的によろしくない。

架線火災事故が起きた嵐山トンネルに進入する旭川行きの特急カムイ
2015年12月に起きた架線火災ではトンネル全長の約半分が延焼し年末年始輸送に甚大な被害が出た
苦渋の選択だが電車を走らせるための設備(変電所や架線)を維持するだけでかなりの経費負担となる。撤去するのもそれなりに大変だが、2015年に発生した嵐山トンネルでの架線火災事故のように電化設備そのものがリスクになることもある。ただでさえ財源の厳しい北海道の鉄道にとっては鉄道施設はシンプルな程良いのだ。
また交流電車とディーゼルカーを比べれば初期投資は電車の方に軍配が上がるが長期的に見ればディーゼルカーの方が何かと経済的だ。その上全てディーゼルカーによる運行に切り替えれば単行運転も可能になり輸送容量に見合った効率的な運行が期待できる。電化したままだと単行運転のために両運転台の交流電車を用意しなければならず費用対効果から言ってもメリットがない。
その上、なんといっても幸い(というのも変だが)貨物列車はすでに全てディーゼル機関車だけで運行されている。接続する各道北・道東方面の路線ももちろん全て非電化区間なので運行上の問題はほとんどない。もし電化していた並行在来線区間の全ての電化車両による運転を廃止すれば並行在来線区間では初めてのケースとなる。
旭川駅東側の高架線をゆくDF200が牽引する高速貨物列車

<どの程度のダイヤにするか>

これで岩見沢・旭川間は区間列車の設定にもよるが、基本的にディーゼルカーによる終日1時間に1本程度、通勤通学時間帯は最大3本程度の運行を確保したい。
とここまでぶち上げると、いくら「馬鹿列車案」とはいえいささか便数が多すぎるように感じるかもしれないが、新幹線接続列車として軽量ディーゼル車両を単行もしくは2両編成でワンマン運転すれば、現在の電車3連の運行からはかなりコストダウンできるだろう。フリークエント輸送で需要を掘り起こす方が得策だ。
このぐらいの本数ならもう一段ハードルを上げて、旭川〜滝川間を単線にしてしまうという荒技もありそうだが、超大編成の貨物列車が走ることもあり、ここではとりあえず複線は維持することにしておく。それよりは伊納駅など今でもほとんど利用者がいない駅は廃止する方が先だろう。
2020年時点で旭川・札幌間の特急は「オホーツク」「宗谷」を含めてほぼ終日にわたって1時間に1〜2本が走る
なお旭川新幹線の運行本数は現状のカムイ・ライラックと同数の1時間当たり1本という想定である。
新幹線の新駅が在来線から離れた場所に設置される予定にした深川市周辺の輸送力確保は重要な役割になるだろう。旭川・深川間、深川・滝川間の区間列車を新幹線接続列車として現状よりある程度増発したい。
とはいえ全て机上の空論である。果たして鉄道利用者がそんなにいるのかはやってみないとわからない。どこまで走っても乗客が乗ってくれない列車の心境はまさにジャクソン・ブラウンのRunningOnEmptyだが、そこはお遊びである。ご容赦ください。
真冬の滝川駅に到着するスーパーカムイ(2017年冬)
まだ19時台だというのにホームには全く人影がない 鉄道利用者をどう繋ぎ止めるか
とにもかくにも結論から言えば、少なくとも現在建設中の新函館北斗・札幌間の並行在来線区間よりははるかに人口の多い都市を結んでおり、山岳区間もないので軌道管理も楽だ。新幹線と線路がほとんど並行しているのもある意味で利点だ。接続列車をうまく組み合わせれば、鉄道利用による沿線の活性化にも望みがつなげるだろう。その点で「旭川新幹線」の並行在来線はまだ経営的に望みがある。あとは新幹線効果をどれだけ掘り起こせるかだ。
では次回はこの区間の具体的な空想ダイヤ(言葉が少々矛盾しているが)と道北・道東方面に向かう在来線をどうするかについて妄想してみよう。