2019年7月25日木曜日

大阪環状線考 【その4・完結編 鶴橋♪ええとこだっせ】

ズルズルと旅をしてきた大阪環状線 ついに最後は環状線のメインストリーム・東半分を乗りつくす


 大阪環状線を知りつくす旅、最後は最も利用者が多いとされる鶴橋・京橋方面へと向かう。環状線内回りの列車は主に11・12番線から発車するが、天王寺から内回り方向に向かう列車は、 全て「普通 鶴橋方面」と表示されている。
次の発車は11番線に止まっていたのは221系の普通列車だが、実際は大和路快速・加茂行きだ。ここで「加茂行き」と表示してしまうと大和路線方面の列車と勘違いして大阪を一周してしまう人が出かねない為の配慮だ。しばらく発着を見ていると外回りを一周してきた列車が結構な頻度でここで折り返すのがよくわかる。ちなみにこの大和路快速は14番線についた後、一旦引き上げ線に向かい、その後方向を変えて11番線に入線してくる。東京で言えば上野駅や品川駅のようなターミナルだが、こちらはなかなかに複雑な運用を行っている。

またすべての列車は環状線の東側を各駅停車として運転する。そんな運用を行っているので、環状線内回り方向の始発列車となるこの大和路快速は「普通・大阪環状線」という表記を出して天王寺を出発し、次の寺田町駅の手前で本来の「大和路快速・加茂行き」の表示に変わる。何かと面倒だが致し方ないところだ。



よく知られている通り、大阪環状線は鶴橋・京橋を通る旧城東線である東側の方が利用客が多い。その理由の一つは鶴橋・京橋という私鉄との乗換駅があることによる。今回はこのうち近鉄との乗換駅である鶴橋を観察することにした。
秋葉原駅を彷彿とさせる鶴橋駅の佇まい 何となく懐かしい雰囲気を感じる
 鶴橋は内回り・外回りどちらのホームも近鉄線と改札一つで乗り換えができる構造になっている。ホームの幅も大変広く、開放的だ。ホームの雰囲気は山手線・京浜東北線の乗換駅になっている秋葉原駅の総武線ホームによく似ている。



というのもこちらも近鉄線と直交する形で交差しているからだ。乗り換え改札はホームのほぼ中央にあり、乗り換え専用となっている。ずらりと並んだ自動改札機が壮観だ。訪問したのは休日の日中だったので閑散としているが、ラッシュ時はさぞがし大変な混雑になるのだろう。
ところで環状線の各駅をよく観察すると、基本的に「黒」を基調としたシックなデザインを施していることがわかる。特に駅名表示以外にも黒一色に塗られた鋼材部分が特徴が特徴的だ。くだんの「大阪環状線改造プロジェクト」の一環で各駅のリニューアルがこのようなデザインで進行している。
個人的には庶民的な「大阪・浪速」のイメージとは少々異なるが、都会的でスマートなデザインはレトロなホームの構造と絶妙なミスマッチを形作っていて、なかなかのセンスの良さが光る。あくまでも個人的な感想ですが。
特にこの鶴橋駅の上屋を支えている鋼製の柱は、リベット打ちで下に行くほど細くなっている平板なエンタシスのような独特のデザインが目を引く。

それにしてもこの不思議な形の柱はいったい何だろう?台座の部分は巨大な六角ボルトで固定されており、柱本体はカーブしている。どう見ても可動構造になっているように見える。まるでチャップリンのモダンタイムスに出てくる工場の機械の一部みたいだ。
見ようによってはなんだか前衛彫刻的でもある。改めてよく見てみると柱の外側の部分は、頭部の形状がかなり平らになっているがどうやらレールらしい。一本のレールをまげて中央の鉄板部分を挟んでいるのではないかと推測される。
つまり廃レールを使った廃品利用の柱らしい。これはいよいよ前衛芸術そのものではなかろうか。廃レールを使った上屋はよくあるが、このタイプは関東の駅では見かけた記憶がない。このように環状線の旅は発見の連続だ。全く飽きることがない。

ホーム上で次々に発着する列車を眺めていると、下車した人たちのほとんどが近鉄線の乗り換え改札に向かっているように見える。
2017年の乗車人数でみると、近鉄鶴橋駅は1日平均約87000人でJR側が約99000人となっている。ちなみに大阪メトロの鶴橋駅は約15000人という。
鶴橋駅周辺は国内有数のコリアンタウンとして有名だが、当然ながら実際に鶴橋駅で改札を出入りする人たちがそれほど多いわけはないので、相当数が相互の乗り換え駅として利用していることがわかる。
環状線の東側はこのほかにも京橋という一大乗換ターミナルがある。


実際にこの区間の転換クロスシート車に乗ると、車内の混雑は結構こたえる。こういう点で乗りなれたロングシートは使いやすい。
実際に乗ってみると確かに西側よりも乗車人員が多いのも当然だと改めて実感した。
さて前述のとおり、鶴橋駅周辺は焼肉店が多く、ホームに降り立つだけで焼肉のにおいがしている。
実際に鶴橋を訪れる前までは、「そんなの都市伝説だろう」と思っていたが実際に駅に降り立った時は思わず笑ってしまいそうになった。
毎日この焼肉の香りに包まれて通勤通学している人たちがいるんだなぁ、と変なことに感心する。「京橋は ええとこだっせ」という大阪を代表する名CMがあるが、鶴橋も負けじと「ええとこ」だった。
列車が去った後は驚くほどの静寂が訪れる
さて半日かけて乗りつぶした環状線の旅だが、焼肉のにおいに負けてこの辺でクラフトビールが恋しくなってしまった。そろそろ最後の区間を乗りつぶして環状線を一周した。
空いていればいたって快適な快速電車だが立ち客が増えたら乗降は大変だ
ということで最後はNRBQのLittle Floaterをガンガン聴きながら大阪にもどり、大阪メトロで難波に繰り出した。ここからは全く「鉄」とは無関係な酒の時間だ。
「道頓堀クラフトビア醸造所」カウンター席の横にコンパクトなタップが並ぶ
この夜はなんばCITYにある「道頓堀クラフトビア醸造所」で串揚げを肴に大阪限定ビールのグラスを傾けながら、次は「大阪メトロ考」でもやるか、と思索を巡らせたのであった。(了)