2019年4月29日月曜日

日本海“半”縦断ロングシートの旅 前編【新潟〜秋田】

日本海縦貫線の北半分を普通列車で制覇しようという旅の話の続きである。
新潟発11時47分、村上行きの933Mに乗車したところから再開である。
さて途中駅での乗客の入れ替わりは新発田で一段落し、羽越本線に入ってからは、車内もいっそう空席が目立つようになった。車窓右手には遠く飯豊山地に連なる山並みも臨めるようになり、いよいよ旅情を掻き立てる。やはりクロスシートはいいな。。



新潟を出発してちょうど1時間、途中の平木田駅(胎内市)のホーム越しに「新しい鉄道林」と書かれたモニュメントに目が止まった。

後方にはかなり立派な防風林が続いているが、このモニュメントの周辺はまだ枯れ草か苗木か判然としない植生の空き地が広がっている。あとでJR東日本のホームページで調べたところ、JR東日本では2008年から線路の防災と環境保全の両立を目指して、更新時期が来た鉄道林の樹木を植え替える「新しい鉄道林」プロジェクトを進めているそうだ。この平木田駅周辺の「新しい鉄道林」は昨年9月に植樹したもので、正式名称は「平木田1号鉄道林」といい、プロジェクト開始10年目の記念林ともなっている。植樹式では地元の人たちなど700人が参加して0.8ヘクタールの用地に7000本の苗木を植樹したとのことだ。


駅近くには既に成長した木と若木が混在した美しい鉄道林がのびる
資料を見たところ平木田駅周辺では2014年にもこのプロジェクトによる植林を行っていた。実はこのプロジェクトを監修しているのは、世界的な植物学者、横浜国立大学名誉教授の宮脇昭氏だ。自分は仕事の関係で10年以上前に「宮脇式植樹」を知り、直接ご本人からいろいろなお話を伺ったことがある。その結果自分はかなりの「宮脇シンパ」になったのであるが、「宮脇式」の理念は「潜在自然植生」による「土地本来の森づくり」だ。大雑把に言えば、その土地にもともとあった多種多様な樹種を混在させることで災害に強い森をつくるというものだ。これこそ生物多様性の真髄である。 人も自然も「単一」よりも「多種多様」であることが最も強いのである。
この「新しい鉄道林」も、以前は単一種だった森を複数樹種に変えることでより強い生態系を維持することを目的としている。
思い返せば場所は違うが羽越本線では2005年に特急「いなほ」が暴風雪による突風で脱線、多くの死傷者を出す大事故がおきている。
あらためて自然に対する恐れや敬意がなければ、人間なんぞちっぽけな存在であることを思い知らされる。そう考えるとこうした自然林によって人工物を守ることの意味の重さを感じるのである。

とかなんとか偉そうなことをつぶやいているうちに、新潟を出発して約1時間20分で終点・村上に到着である。
快適なE129系の旅はここまで。ここから羽越本線でも有数の景観をたのしめる区間に入るが、次に目指す列車、酒田行き827Dは約50分の待ち合わせだ。いささか時間が空いてしまうのでとりあえず改札を出場して駅前を探索してみた。

村上市は「鮭の町」として全国的に有名だ。ここはひとつ名物の鮭を昼食の目玉にと思っていたのだが、お目当にしていた駅前の食堂が臨時休業だったため、食いっぱぐれ&時間持て余しとなった。。ちなみに写真にはないが、駅前には村上市出身の作曲家・大和田愛羅という人物が作曲したとされる唱歌「汽車」(「今は山中、今は浜・・・」)の記念碑が建てられている。(ただし作曲者については諸説あるらしい)
ということで仕方ないので駅の売店NEWDAYSで食料品を調達して次なる列車に乗り込んだ。この827Dは933Mの到着前から既にホームで乗客を乗せていたようだ。まだ発車まで30分以上あるというのに10人ぐらいは既に車内でくつろいでいたのには少々驚いた。

村上駅は直流区間と交流区間の接続点になっている。ここから北に向かう区間は交流電化区間となるが、酒田までを管轄する新潟支社は直流方式の普通列車用電車しか持っていないため、すべての普通列車はこの先、架線の下を延々とディーゼルカーで運行する。



おかげで酒田まではまだ「ロングシートの旅」はおあずけなのだが(別にロングシートに乗りたがっているわけではない)、車両はさすがにかなりくたびれてきた感のある新潟色のキハ47、2両編成だ。乗り心地はそれなりであることは覚悟の上で、これからの車窓の絶景に期待が膨らむ。

ぶっきらぼうなサボも懐かしさを誘う 

ただしここでちょっと気になることがある。村上を挟んで交直区間を直通する普通列車はどのくらいあるのか、調べてみたところ下り酒田方向は1日8本中、酒田行2本、鼠ケ関行が1本あるだけだ。素人考えではあるが、ほとんどの列車が村上で分断されているのだから、村上・酒田間の列車は秋田支社から701系を借りてきて走らせた方がスピード的にも運行コスト的にもいいのではないかと思ってしまう。もっとも車両が足りないだろうし、デッドセクションの位置と切替方式を変えなければならない。非現実的な上に、そもそもそんなことをすると「18きっぷ」連から総バッシングをくらうこと間違いなしである。

そんなわけでここからは昭和の香り満載のディーゼルカーの旅である。30分以上も前から出発を待っていた乗客がいたので、いったいどのくらいの利用者がいるのかと思ったら、結局出発直前でも2割程度の乗車率だった。ディーゼルの豪快な起動音を轟かせて列車は定刻通り村上駅を出発した。否が応でも六角精児バンドの「ディーゼル」のメロディーが頭に流れてくる。
それにしてもあらためて国鉄型の車両で旅をすると、やはり「これだよ、これ」という気持ちになってくる。それもほぼ垂直みたいな背ズリの青いモケットのシートに座ると、乗っているこっちも背筋がピンとなってくる気がする。しかしながら経年変化は如何ともし難く、背中を動かすたびに背ズリの腰のあたりが「ボコッ、ボコッ」と怪しい音を立てて凹んでは元に戻るといった挙動を繰り返す。さすがに他の乗客の迷惑になっていないかと少々気になるが、幸い一人で1区画を独占できるようなこの乗車率なら問題ない。
村上を発車してまもなく車内検札が行われた。この区間はワンマン運転ではなく車掌が乗務している。検札が終わったあたりで、列車は日本海に面した区間に出てきた。
日本海が車窓いっぱいに広がる
これぞ「日本海縦貫線」の醍醐味である。これだけ海岸線に沿って長い区間を走る路線はそう多くない。やっぱりロングシートでなくてよかったとつくづく思う。
この日は4人掛けの1区画を独占できる程度の乗車率なので、ほとんど貸切状態でしばし車窓を楽しめた。それにしてもやはり老兵キハ47、エンジンを唸らせながら走る様は、何となく「遅い」というイメージにつながる。


名勝「笹川流れ」も車窓から楽しめる
ところがどっこい、「遅い」というのは単なる思い込みで、この827Dの場合、村上・酒田間107.5kmの所要時間はちょうど2時間30分、表定速度にするとぴったり時速43kmだ。京浜東北線(東京〜桜木町 平日日中)の快速よりもちょっと速い。大都会の鉄道と比べることにあまり意味は無いが、ディーゼルカーだからといってバカにしてはいけない。普通列車としてはそこそこ速いのである。ちなみに新潟・村上間の933Mの表定速度は時速約45km。線形に加え駅間距離の違い(827Dの方が平均の駅間距離は約1kmほど長い)や途中の列車交換の有無があったとはいえ、ダイヤ上の速さだけを比べれば最新の電車列車とほとんど変わらない。このあたりは駅間の長いローカル幹線ならではの利点だが、とにかくキハ47、今も大活躍である。なるほど、701系を借りるまでもないわけだ。

そうこうしているうちに、午後のゆるい日差しを浴びながら列車は日本海から徐々に離れ、庄内平野へ入ってきた。こちらもそろそろ退屈してきたので、村上駅で購入した新潟限定ビール「風味壮快ニシテ」を開けて、しばし「酒鉄」を決め込む。ちなみにこのビール、我らが北海道が誇る「サッポロクラシック」の兄弟のような商品だ。味わいも決して引けを取らない。新潟に行ったらはずせないビールである。旅の贅沢三昧を堪能する。

軽い酔い機嫌でウトウトしかけたところで、あっという間に終点酒田駅に定刻通り到着した。件の羽越線事故現場も気がつかないうちに通り過ぎてしまっていた。時刻は16:17、そろそろ帰宅を急ぐ人たちが駅に向かう時刻が近づいている。




ここ酒田から先は今日の最終ランナー、秋田行553Mがトリを務める。乗り継ぎ時間は13分なので、ぼーっとしている暇はない。そしてついにここからお待ちかね、秋田の主役・701系のお出ましだ。これから秋田までの1時間50分にわたる「ロングシートの旅」の幕開けである。

ついに出た 701系
物好きな旅人を秋田まで運んでくれる今日の主役は秋田車両センター所属のN24編成である。2両編成でこの区間はワンマン運転が行われる。ワクワクしながら(なんで?)ボタン式の半自動ドアを開けて早速車内に乗り込む。
当たり前の話だが乗ってしまえばただの通勤電車でした。。。
色気も何もあったものではないが、車歴は経っていてもそこは新系列電車らしい明るさがある。同じ通勤型でも103系のような薄暗い蛍光灯の車内とは大違いだ。そりゃ当たり前だけど。。ちょっとおしゃれな感じの赤い背ズリの部分は優先席だが、いかにも「とりあえず優先席は指定しておきましたよ」的な印象は拭えない。何しろ2両編成オールロングシートに加えこの利用者数だ。優先席の必要性はどんなものだろうか。もっともラッシュ時は混むのだろうが、いずれにしてもわざわざ「優先席だよ」と指定する前に、せっかくのロングシート(?)なのだから、せめて地方の鉄道はもっと譲り合いの精神を醸成するべくモラルの向上を図ってもらいたい。
 それはいいとして、ちなみにこの553Mの表定速度は57.7km/hだ。あの京急の快特でも59km/hぐらいだから、単純に比較はできないものの、私鉄の通勤特急クラスやJRの都市部を走る快速列車相当の速さということになる。

ロングシートであることで、鉄道ファンからはあまり評判のよろしくない701系だが、運転席からの前面展望はかなりよろしい。先頭車の最前席に座れば顔を横に向けるだけでソコソコの「電車でGO」気分を味わえる。ここから見ると、結構なスピードで走っていることが改めて実感出来る。
実はこの電車、やたらと加速がいい。諸元を見ると突出して加速性能に優れているというわけではないが、乗車人数が少ないことも影響しているのかもしれない。加えてこの前に乗っていたのはキハ47ということもある。比較の問題もあるだろうが、とにかく出発時の加速がすごい。停車中にトイレに行った際、発車したところで一瞬よろめいてしまった。別に歳だからではない(と思う)。車でいうとGTRみたいな加速感だ。(これは言い過ぎだ)ちなみに走行中も相当なスピードで走っている。ボルスタレス&ダンパーなしとなれば、乗り心地はあまり良くはない。立っていると吊り革なしではちょっと厳しいだろう。一言で言うと「跳ねている」感じの走りだ。これぞ平成の「ラビットカー」だな。そういう意味では快走していることは確かである。



ガラガラの車内 ロングシートがいっそう長く見える

さて、あらためて車内をじっくりと観察してみる。出入り口のステップが一段下がっている以外は都会の通勤電車と全く変わらない。強いて言えばびっくりするほど車内広告が無いことか。それも選挙の啓発広告の他は自社の宣伝だけである。他人事ながら広告収入が無くて大丈夫かと心配になる。
それはともかく、やはり旅情の点ではどうにも今ひとつではある。ロングシートの味気なさは如何ともしがたい。
とはいえ、悪いことばかりでも無い。先ほども書いたようにこの電車、「跳ねる乗り心地」はともかく、とにかく速いことこの上ない。50系客車から701系に変わった時は、さぞかし地元の人たちは喜んだのでは無いだろうか。そもそも通勤通学に利用する人たちにとっては、速さが最も快適さを示すバロメーターだろう。自分でも車両だけの問題ではなく基本的には「速くて快適」であることは通勤電車にとって最も望むことだ。例えて言えば、確かに東急9000系の車端部にあるクロスシートはそれなりに魅力だが、やはり混雑している時の乗り降りは面倒だ。「それと地方の電車を比べちゃいけねえよ」という声が聞こえてきそうだが、ロングシートの採用にあたっては車内清掃や利用者のマナーの問題もあったという話を聞くと、たまにしか利用しない旅人のためにどこまでサービスを考えるのかは難しい問題なのかもしれない。


さてロングシートは旅情が無いとはいうものの、やはり景色はすばらしい。車窓からは鳥海山が見えてきた。なにしろ車内はガラガラだ。さすがに子供のようにシートに逆向きに座って窓にかぶりついたりはしないが、体を横に向けて座ればクロスシート以上に車窓の景色が迫ってくる。空いてさえいれば、ロングシートの不自由さはあまり感じない。
酒田を出てしばらくは内陸を走るが、吹浦を出たあたりから再び日本海に沿って海岸線を走る。おかげで山と海、どちらも絶景を楽しめる。

             「女鹿(めが)」駅手前の海岸線


どうでもいいが、ちなみに日本には「メガ」以外「ギガ」駅も「テラ」駅も無い
 
そうこうしているうちに東京を出発してそろそろ8時間が経過しようとしている。さすがに「乗り疲れ」には勝てなくなってきた。こういう時、ロングシートはよろしくない。惰眠を貪っていると、はたから見れば完全に疲れ切った通勤帰りのサラリーマンにしか見えない。まあ、似たようなものだが。とはいえ夕暮れが近づく中、睡魔にはかなわず電車の揺れに任せてしばし眠ってしまった。
「横向き」に座っていても車窓はそれなりに楽しめる

目が覚めた時にはすでに仁賀保駅に到着していた。秋田まではまだ50分ほどかかるが、なんせトータル9時間超の行程である。もはや本日の旅は終わりに近づいている。

ということで(はしょりましたけど。)無事秋田駅に定刻通り到着!18時19分、東京駅を出発して9時間7分の旅の完了である。とても最速の上越新幹線を使ったとは思えないが、新潟からは約6時間半、途中1時間近い待ち合わせが2度あったので普通列車の旅としては上々だ。2時間弱のロングシートの旅だったが、いざ乗ってみればそれほど苦痛ではなかった。ただし感じ方には当然個人差がある。誰にでもお勧めできるものでは無い。

 新幹線ホームに「こまち」が止まっていた こいつに乗れば東京・秋田間は最速3時間50分台の行程だ
ということで「日本海”半”縦断の旅」の前半戦終了である。あすはいよいよ3時間超のロングシートの旅が待っている。今日は早めに宿を取り、昼の食いっぱぐれを取り戻すべくイーグルスの「New Kid In Town」を聞きながら夜の秋田市内に繰り出した。さあ秋田の銘酒「秀よし」と「刈穂」が待っているぞ。

 
後編につづく

2019年4月21日日曜日

トレインジャックと受信料

「ロングシートの旅」の途中だが、閑話休題。ここで近場の田園都市線の話をひとつ。
@中央林間

自分は東急沿線の住民だが、先日(4月上旬)に久しぶりに田園都市線に乗ってちょっと気になる光景に出くわした。写っているのは5000系5110F編成。外見は全く何の変哲も無いが、一歩車内に入ると、、、、
こんな感じ。
このサイズで見るとよくわからないと思うが、車内広告がサイネージも含めて1社で独占されている。これを業界では「広告貸切電車」、あるいは「トレインジャック」と言ったりしている。よく新製品や新しい商業施設が出来た時に使う手法だ。東横線の「HIKARIE TRAIN」なども自社の宣伝ではあるが、基本的に同じようなものだ。編成のうちの一部だけを貸し切る場合もあるようだがこの5110F編成は10両すべてが同じ広告主で「ジャック」されている。

で、この電車の場合どこが「トレインジャック」しているのかと思ったら、なんと公共放送NHKだった。それも「BSプレミアム」の番組のみを紹介している。


どうも4月からの新年度編成に合わせて、BS普及を狙ってBSプレミアムの新番組を中心に紹介しているらしい。それも夜11時台の番組が中心だ。
それにしてもどのポスターやサイネージも、若い女性をターゲットにしたどこかの化粧品やファッションビルの宣伝のようで、一瞬見ただけではNHKとはわからない。どうやらターゲットとしているのは20〜40代の、それも女性を中心とした層ではないかということがわかる。まあ衛星受信契約を伸ばすため、いろいろ苦労しているのだろう。
なにしろ2018年に発表したNHKの3カ年計画によると、2017年度目標だった受信契約率目標80%、うち衛星契約率51%を毎年1ポイントずつ上げていくことを次の目標として掲げている。
この広告宣伝費もこの3カ年計画達成に向けた投資ということだろう。

「渡辺直美のナオミーツ」のポスターは2パターンある 
ちょっと見ると番組の宣伝とはわからない


ただこの車両に乗り合わせたら延々とNHKのBSプレミアムの宣伝を見せられ続けるわけで、さすがに10分も乗っているといささか複雑な気分になってくる。別に他の「トレインジャック」だっておなじことでしょ?と思わなくは無いが、今回の広告主は「公共放送NHK」だ。いかに商品を買ってもらうかという民間企業とは違う。これが民間放送やNetflixならわかるが、ご承知の通りNHKの場合、特に番組を商品として販売するわけでは無い。受信契約を結めば自動的に受信料が入ってくる制度で成り立っている。そういう法的根拠がきちんと整備されている。にもかかわらず、高額な広告費を投入してまで番組(チャンネル)をアピールしなければならない理由がわからないのである。
いくら3カ年計画の達成を目指すとはいえ、一般の感覚とずれてはいないだろうか。
こっちは「晴れ、ときどきファーム」、「週末農業」をテーマにしているそうな

ずっと見ているともうわかったのでそろそろ
「いいかげんにしてほしい」と思ってしまう。

そもそも受信契約向上の話を別にして、個々の番組は面白いにもかかわらず視聴率が伸びていないために番宣を打つ必要があるのかもしれないが、それをPRするのは何もトレインジャックでなくてもいいのでは無いか。最近はメディアウォールなどという壁一面の宣伝を使ったNHKの広告もよく見かけるようになったが、その財源は全て受信料だ。結局私たちの払った受信料が民間の広告代理店を儲けさせることに使われているに等しい。

右も左も・・
どっちをむいてもBSプレミアムだらけ。。。

この広告を代行しているのは東急グループの大手広告代理店・東急エージェンシーだが、ホームページで紹介されている内容を見ると、1編成を貸し切った場合、14日間で3300000円(税別)となっている。余談だが全編成(田園都市線)の女性専用車の中吊り広告だけを貸し切った場合は7日間で3000000円(同じく税別)ということなので、ほぼ同額のコストをどちらに投入するかはモノによりけりということだろう。おそらく一般的な広告宣伝費からすると、広告媒体としてはそこそこ効果的なのかもしれない。
とはいえ300万円以上の受信料を使ってまで、やることなのか?という疑問ばかりが残るのである。

いろいろなポスターで「うるおいの夜11時」をアピールしてくる
もしかするとそれぞれの番組は面白いのかもしれないが、
これでもか、とばかり見せつけられるとさすがに辟易してしまう
繰り返しになるがNHKの番組なんて極端な話、視聴率が1%を切ろうが何だろうが、協会の収益に関しては何の問題も無い。もちろん低視聴率の番組ばかり作っていては、NHK全体で視聴者離れを起こしてしまうので、間接的には問題を起こすかもしれないが、しかしそれは二の次の話だ。少なくとも街頭広告で番組に関心を持ってもらおうという作戦はほどほどにしてもらいたいものだ。何でもやりすぎは反感を買うだけだ。
受信料の使い道を誤っていないか?
やっと「ジャック」から解放。

ということで田園都市線に乗ったおかげで、(見るかどうかは別にして)BSプレミアムの夜11台の番組はよくわかりました。。ちなみに自分はきちんと受信料は払っている。
ということで結論。ちゃんと受信契約をしている立場で言わせて貰えば、こういうことに受信料を使うことには反対だ。
そんなこと思いつつ、この日は代官山の東横線跡地にオープンしたクラフトビールの醸造所直営のダイニングバー「スプリングバレーブルワリー東京」で、東横線の地下化で廃止された「旧渋谷第一踏切」を名前の由来に持つという「ファーストクロッシング」を傾けながら、公共放送について悪友と議論を交わしたのである(うそ。)。ちなみにBGMはもちろんオジーの「CrazyTrain」である。
 
香り華やか 飲み口も爽やか
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2019年4月14日日曜日

日本海“半”縦断ロングシートの旅 プロローグ【新潟到着編】

今回の青春18きっぷの旅、のこり2日分は新潟から新青森まで、日本海縦貫線の北側半分を完全走破する普通列車の旅にあてることにした。とはいえ東京から出発するので、この歳で今さらすべて鈍行というわけにはいかない。そういう無謀な旅行は若い人たちに任せて、こちらは新潟まで「超快適な上越新幹線で一気にワープ」と洒落込んだ。そもそもこの区間はロングシートオンリーの列車が次々と登場する区間だ。初めぐらい楽をしておきたい。

まず乗り込んだ列車は「とき311号」、新潟までの途中停車駅は大宮だけという最速達列車だ。安っぽい表現で恐縮だが、これぞ「とき」の中の「とき」、正に「キング・オブ・とき」である。昔でいえば「超特急」あるいは「最大急行」といったところか。案内表示板の停車駅欄がスッカスカで「何か問題でも起こったのかっ!?」と錯覚しそうになる。これだけ見てもいかにも速そうだ。
我ながらこのあとの旅のスケジュールとくらべてメリハリがすごい。
今となっては懐かしさも感じるE2の面構えはムーミンのようでちょいとかわいい

「とき311号」は上越新幹線のフラッグシップといってもいい列車だが、使用されているのは今やE3系共々JR東日本の新幹線車両としては最古参になってしまったE2系のJ編成だ。余談だが自分は仕事の関係で、長野新幹線の試運転列車に乗車したことがあるので、E2系には特別の愛着がある。残念ながら開業当時から頑張ってきた8両編成のN編成はすでに全車引退したそうだが、E7系に伍してこうして上越新幹線の主力選手として活躍しているのを見ると何だかほっとする。
7号車指定席をのぞく
さてこの最速列車、乗車率はどんなものかと車内をちょいと調査したところ、普通指定席で5割、グリーン車で3割程度の座席が埋まっているといった感じだった。自由席車は調査しなかったので推測に過ぎないが、全体の乗車率は6〜7割ぐらいではないかと思われる。やはり途中停車タイプの列車ほど利用者が多いことが推認できる。「こだま」の混み具合がハンパないのと基本的には同じようだ。
というわけであっという間に新潟に到着である。10時49分着で所要時間はわずかに1時間37分、これは速い。しかしながら特に急ぐ必要もない自分にしてみれば「もっとゆっくり乗っていたい」という気にもなってくる。全くわがまま言い放題である。なぜならこの先乗り継ぐ白新線の村上行き普通列車は11時41分発となんと1時間近くも待ち時間がある。1本後の「とき313号」に乗っても何の問題もなかったのであるが、そこは「現場百回」の精神で最速列車の乗車体験をしたかったという自己都合だ。おかげでこの後なかなか良い勉強になった。

ところで自分は新潟には5年前に出張で訪れて以来なので、駅の変貌ぶりに驚いた。在来線の高架化第1期工事が終わり、現在は新幹線から在来線へ上下移動することなく同じホームで乗り継ぎできるようになっている。かつての新八代と同じスタイルだ。「とき311号」の場合、到着すると両側のドアが開くのだが、進行方向右側のホームは通常の降車ホーム、左側の乗り継ぎ専用ホームに降りると目の前に酒田行きの「いなほ3号」が止まっている。在来線乗り継ぎ専用改札を抜ければすぐ列車に乗り込めるという趣向である。
この日は降車した乗客の3〜4割ぐらいが「いなほ」に乗り継いでいたのではないかと思う。
衝撃のショッキングピンク「いなほ3号」酒田行き 
JR九州のレッドトレインに引けを取らない派手さが目を引く
実はこの「とき311号」から「いなほ3号」に乗り継げば、終点の酒田には13時過ぎに到着する。所要時間は3時間52分、わずかに4時間を切る。YAHOOの乗り換え検索で調べた上では、ほぼ同じ時刻に酒田駅に到着すると思われる全日空395便を利用した場合と比べると、東京駅を起点にすれば空港での搭乗手続きなどを考慮して、所要時間の差は50分強といったところだ。
この差をどう考えるかは人によるが、手荷物の扱いなど搭乗手続きの手間や鉄道の手軽さを考えた場合、さらにはそもそも飛行機が苦手の人にとっては十分選択肢に入るのではないか。
大体鉄道なら基本的に「機材繰りで運休」も「目的地の天候不良で出発地に逆戻り」もまず無い上に、(まだ国内には導入されていないとはいえ)「MCASの不具合」とやらで操縦不能になることも間違いなく無い。やはり地上を走って移動するのは気分的に楽だ。
ちなみに逆コースとなる上り方面では、酒田を6時45分に出る「いなほ4号」に乗ると、これまた1日1本しかない上りの最速達列車の「とき312号」への乗り継ぎで、東京までの所要時間は3時間58分と時間的には微増となるが、こちらは庄内空港発第1便の全日空396便を使った場合との差はわずかに9分しかない。

となると、ここにきて「とき311号」と「とき312号」が最速列車である存在感が光ってくるのである。新幹線沿線ではない地方都市であっても、高速で利便性の高い交通手段として、まだまだ鉄道も頑張っているのである。引き続き羽越線の高速化計画もあると聞く。条件は厳しいとはいえ、こうした細かな戦略を巡らせていけば、路線を縮小することだけに躍起になっているかのようなJR北海道でもまだ勝機はあるのではないかと思った。頑張ってもらいたいものだ。

さて本題に戻り、いよいよ普通列車の旅の始まりである。まだ工事箇所が残るものの、新装なったピカピカの在来線コンコースから白新線村上行き933Mの待つ3番線へと上がる。
普通列車の旅のトップバッターは、最新鋭のE129系である。旧型車両を続々と淘汰しつつある新潟地区のエースだ。地元・総合車両製作所新津事業所製なので、言うなれば「地電車(じでんしゃ)」である。勝手に言ってみたが音だけ聴くと「自転車」みたいだな。。
E129系には2両編成と4両編成があるそうだが、この列車は4両編成のいわゆるB編成だ。
実は「ロングシートの旅」と銘打ったものの、実は初日の全行程のうち約半分の酒田まではしっかり「クロスシートの旅」が約束されている。ありがたや。
E129系の車内は中央の扉を境にセミクロスシートとロングシートが半分ずつ配置されている。2両編成の場合、運転席寄りがロング、連結面よりがセミクロスとなる。一部の701系やJR四国の7000系のように、ロングシートの向かい側がクロスシートといったどうにも落ち着かない点対称式のレイアウトでないところがこれまたありがたい。
おまけにこのシート、完成度が高く快適だ。基本的にE233などとほぼ同じ構造だが、背もたれの角度や座面の硬さも長距離移動に十分対応できそうだ。そして何と言っても十分余裕をとったシートピッチは特筆ものだ。E231,233系よりも明らかに広い。これなら4人で利用していてもストレスなく乗降できそうだ。後で調べたところロングシート側も1人分の幅が広くとられているそうだ。

さすがに通勤型の電車の中で「駅弁買って車内でまったり」といった行為は気が引けたので今回は遠慮したが、これなら軽食程度であれば十分車内でとることは可能だろう。もちろん他の乗客の迷惑にならないよう基本的なマナーは守っていただきたいが。
この933M列車は正午を挟んだ時間帯の運行だが、この日は沿線の学校に通っていると思われる学生や生徒の利用が多かった。新年度が始まったばかりということなのか、普段の登下校とは違うと思われる時間帯での通学利用者が目立った。
全体の着席率でいうと5割程度だったが、途中駅での乗客の入れ替わりが多く、ほとんどのクロスシートは1〜2人で利用できるようだった。村上までの1時間10分だけの乗車というのが少々残念だが、おかげでなかなか快適な普通列車の旅のキックオフとなった。
ニュータウンの様相を見せる西新発田駅周辺 利用者も多く駅前の開発が進んでいる様子がうかがえる
ということでウィリー・ネルソンの名曲「On The Road Again」と地元・酒処新潟の銘酒「吉乃川」スパーリングを旅の友に新潟を後にし、一路秋田を目指したのである。
なんだかんだ言っても結局車内で呑んでいるのである。。
つづく