2019年12月29日日曜日

【酒と鉄のバラード】仙台往復・弾丸居酒屋新幹線の旅

最近は音楽・書籍をはじめファッション・アパレルまで、もうなんでもかんでもサブスクリプション流行りだ。当然の如く鉄道旅にも古くからサブスクリプションがある。国鉄時代の「周遊券」も今で言うサブスクリプションだが、今は多種多様なこうしたきっぷがある。
年齢条件があるものの、JR東日本の会員制サービス「大人の休日倶楽部」会員限定の「大人の休日パス」は、今最もお得な「サブスクリプションきっぷ」の一つだ。期間限定ではあるが15000円ちょっとで連続する4日間、JR東日本管内の全路線、それも新幹線・特急の自由席が乗り放題という、大盤振る舞いのチケット(パス)なのである。加えて「青春18きっぷ」と違いエリア内の一部の第3セクター路線やJRの列車が直通している富士急行、伊豆急行線なども利用できる。
使用済みの「大人の休日倶楽部 東日本パス」 指定券の発券をする度に★印が印字される
この「パス」にはJR北海道エリアも乗り放題の「東日本・北海道」版もあり27000円弱で5日間乗り放題になる。北海道エリアのみのパスもあるが、こちらも同じく有効期間が5日間なので17400円と東日本版より少々高いが、いずれにしても新幹線を含めた特急の自由席が乗り放題に加えて、6回までなら指定席の利用もできるので「はやぶさ」や「こまち」をうまく利用すれば相当な範囲をこの定額で移動できる。
したがってこの「東日本パス」を使えばJR東日本管内4日間は(時間が許す限り)どこへでも自由に移動できるということである。
ほとんどの利用者は4日間を泊まりがけの正統な旅に使うのではないかと思うが、そこはこちとら「鉄道の馬鹿旅」である。まともな旅で使ってもほとんど意味がない。(なぜ?)そこでここは少々仕事を早めに切り上げて、会社帰りの一杯をやるためだけに東京から仙台まで行くことにした。簡単にいうと「仙台まで一杯ひっかけに行く」だけの贅沢な旅だ。

ということでやってきました、東京駅。ラッキーなことに17時20分発のこの「はやぶさ33号」は滅多にお目にかかることのないH5系だった。それにしても週末とは言え夕刻の東北新幹線の混雑は半端ない。自由席のある「やまびこ」は仙台まで立ちっぱなしの乗客もいるようだった。もちろんこちらは6回使える権利で「はやぶさ」の指定席をとって早速車内で一杯と決めこんだ。ただし今回は車内の混雑に配慮して画像なしである。

でもってたったの1時間30分であっという間に仙台到着である。まだ19時前、帰宅の人々で賑わう夕方の仙台駅コンコースは、すっかりクリスマス気分満載で活気にあふれていた。なんだかさっきまで東京にいた自分がもう仙台にいるのが今更ながらに不思議な気分である。やはりすごいぞ、新幹線。
わざわざ仙台まで来て一体どんなすごい店に行くのかと思われるかもしれないが、東京日帰り(それも夕方17時に東京を出て、だ。)なのでそんなに街中の凝った店に行けるわけもない。なにしろ予定している帰りの新幹線まではジャスト1時間だ。
一直線で目指すは仙台駅構内の日本酒酒場、「仙臺駅日本酒バル ぷらっと」だ。宮城県の様々な地酒が多数揃っており、特に一人客でも楽しめるフードメニューが充実しているのである。
小洒落ているものの極めてカジュアルな佇まい 一人でも気軽に入れるところがうれしい
店は仙台駅の1階コンコース内にある。実は以前にも一度この店を目指したのだが、恥ずかしながら場所がわからず訪問を断念したことがある。
というのも自分は仙台駅の構造がいささか苦手だ。特に方向音痴でもないし、道順を覚えたりや地図を見ることは得意な方だと思っているが、どうにも仙台で新幹線を降りると自分が今何階にいるのかがややこしくなってしまう。その1番の原因は新幹線改札が3階にあるということに尽きる。
3階新幹線改札を出たところから2階のロビーをのぞむ
何回来てもこのフロアが2階だと言われても今ひとつピンとこない
使い慣れてしまえばどうということはないのだが、在来線中央改札は2階にあるのに新幹線改札だけ独立して3階にあるというのが混乱の元なのだ。ちなみに2階にある在来線の中央改札口から入場すると、えらく狭い通路を通って3階の新幹線改札に上がることになる。こういう大きい駅ではちょっと珍しい構造だ。東京だって大宮だって、さらに新大阪、名古屋、博多だって在来線も新幹線も改札は同じ階にある。「迷うお前の方が悪い」と言われればそれまでだが、改札階が上下で分断されているのはわかりにくい。
話が行ったり来たりしてしまったが、とにかく無事に「ぷらっと」に到着、早速店内に入る。
「ぷらっと」は1階コンコースのやや南寄り、「エスパル仙台」側にある。
前述したとおりこの店最大の魅力はなんといっても宮城の地酒が各種揃っていることだが、なんとそのすべてが100分飲み放題というコースもある。フード付きなら4500円、飲み放題のみなら3500円と少々お高いが、お好きな向きには相当お値打ちである。それも頼んだ銘柄を一升瓶で持ってきてくれるというのだから相当ワイルドだ。ただしいくら自分も呑兵衛だからとはいえ1時間弱の滞在で東京までとんぼ返りする身に飲み放題は危険極まりない。(元は取れてもである)今回は飲み放題は見送って、まずは2000円で地酒3種とおつまみ4品がセットになった「にせんべろ」(2000円でべろべろ)セットを注文した。
おつまみは山芋のあえものやちょっとしたお造り、塩辛に加えてさらに「かす汁」までついてくる。暖かいものがあるのは嬉しい。一方日本酒はというとこの日の店のチョイスで3種類の銘柄が自動的に出てくる。この日は「蒼天伝」の「しぼりたて純米生原酒」、「浦霞」の純米原酒「塩竈もうで」、さらに「山和」の「燗純米」の冷や、というなかなか都内の居酒屋では一度に味わえないイカしたトリオであった。
「にせんべろ」セットの地酒3種
 ということで「キックオフ」からもうご機嫌である。さすがに2000円でべろべろになることもなく、早速第2ラウンドに突入する。今度は地酒の「飲み比べセット」3種と、お一人様限定の「ローストビーフ」ハーフサイズ&「地元宮城産の牡蠣フライ」(2個)を注文した。
お一人様限定のローストビーフハーフサイズ このボリュームで500円也
「ぷらっと」の嬉しいところは食事のメニューの中にこのような「お一人様限定」の少量サイズのものが数多く揃っているところだ。一人のんべえの気持ちをよくわかっておられる。ちなみにカキフライ2個で350円。お手軽だ。ほんの少し豪華なつまみにしたいときにぴったりである。
なんでもオーナーが「こんな店があったらいいのに」というコンセプトで開店したとの事で、さすが酒飲みの気持ちをうまくくすぐってくれる。

「3種飲み比べセット」は好きな銘柄を選んで980円
今度の地酒3種は「蔵王」の「特別純米K KURAchic」(ダジャレです)、「森泉」特別純米酒、「伯楽星」特別純米酒の「特別純米」3連発を選択した。いずれ劣らぬ宮城の銘酒だ。食事とも相性ぴったりでもう大満足である。なお各グラスは50mlなのでこのセットで概ね1合いただいた感じになる。したがってここで2合ほど引っ掛けてちょうど時間となりました。すべてまとめて3800円とちょっと。現地滞在時間約50分といささかせわしないが、ちょいと豪勢な一人呑みの旅終了である。
典型的な「一杯機嫌」で新幹線ホームに上がると、ほどなく帰りの「はやぶさ38号」が入線してきた。この時間(ほぼ20時)でもまだまだ新幹線ホームは上り・下りとも大勢の利用客で賑わっていた。

ということで、17時に東京を出発して22時には再び東京に戻ってくるという「仙台居酒屋弾丸ツアー」は無事終了である。とはいえ家までの帰路はまだ2時間弱ほどもある。当然の如くBGMにドゥービーの「Long Train Runnin'」を選択して、仙台駅構内の「NewDays」で銀河高原ビールをゲット。(ちなみに「大人の休日パス」を提示するとなんと10%オフ!)もう少々の延長戦で「居酒屋新幹線の旅」を締めくくった。(了)