2020年1月6日月曜日

【シリーズ妄想馬鹿列車②】新春初夢企画・北海道新幹線旭川延伸計画<その1>

オリンピックイヤーの2020年となり、北海道新幹線の札幌開業までついにあと10年となった。一応、ではある。現在新函館北斗まで開業している北海道新幹線だが、やはり東京以北では最大の都市、札幌までつながらないことには話にならないと言っても過言ではない。1日も早い新函館北斗・札幌間の開業が待たれる。
特に札幌市は2020東京五輪でのマラソン会場となったことで、2030年の冬季五輪開催も現実味を帯びてきた。そうなると2030年よりも前倒しの開業も期待されるところだが、今回の「妄想」はこの札幌開業がテーマではない。今回は北海道新幹線の本当の目的地である旭川までの新幹線の可能性を妄想してみたい。
JR北海道の「虎の子」H5系

<北海道新幹線は青森・旭川間をむすぶ計画だった(である)>

もう今となっては道民でもどのくらいの人たちが覚えているのかわからないが、元々計画上の北海道新幹線は青森市から旭川市に至る路線ということになっている。ところがもう今では北海道庁のホームページ上でも「北海道新幹線は東北新幹線の新青森から札幌まで約360kmに及ぶ路線です」というように紹介されている。
参考リンクhttp://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/skt/

もちろんこれはあくまで整備新幹線として認可され、現在建設が進む新函館北斗・札幌間を北海道新幹線の残りの区間としているからだ。この区間の工事認可は2012年におり着工、今に至っている。結果的に事実上これが北海道新幹線の最終目的のようになっているからであるが、それでも北海道新幹線の基本計画は1973年に決定されている札幌・旭川間を含めた区間であることは今でも変わっていない。
ということでもし北海道新幹線が整備計画通り旭川まで延伸する場合、どういったことが考えられるのか、それが今回のテーマだ。
これまた我ながら大袈裟だが、札幌・旭川間はあくまで「計画路線」なので、どこに線路を通すか、駅をどこに置くかなどは全く白紙状態だ。したがってこれからの話は「全く自由に鉄道を建設する」というただのお遊びである。
旭川市の中心市街地
 ところどころ空き地が目立つがオフィスビルが立ち並ぶ様はまさに中核都市

<そもそも旭川市ってどんな街?>

ではまず旭川市とはどういう街なのか?という話から始めよう。札幌市から直線距離で約120km北に位置する旭川市は人口約33.4万人、人口の規模だけで見ると県庁所在地である前橋市とほぼ同じ、奈良市や長野市など(36〜7万人)より1割程度小さい感じだ。これを東北以北の北日本というくくりで見れば、札幌(約195万人)、仙台(約108万人)、いわき市(約34万人)に次いで4番目の都市ということになる。(近年いわき市に抜かれるまでは3位だった)2番目と3番目の差があまりに大きいのは致し方ないが、北海道だけでいえばダントツ2位の大都市である。
近代日本人 にとっての旭川の歴史は、事実上北海道開拓時に道北・道東への進出拠点として屯田兵が入植したことにはじまる。その後陸軍第7師団が駐屯する軍都として軍事的な重要度から政治・経済・文化の拠点として発展してきた。今でこそ札幌に大きく水を開けられているが、今も昔も北海道の発展を支えている北海道第2の重要都市である。
最近は隣接する東川町や東神楽町、鷹栖町、美瑛町などへ道内だけでなく東京や大阪など本州の大都市から移住してくる人たちが増えてきており、旭川市としては人口減少傾向にあるものの、事実上38万人規模の旭川都市圏を形成している。
美瑛町の名を世界的に広めたと言ってもいい「青い池」 
冬の旭川駅前 毎年2月に氷の彫刻の世界大会が開催され街を彩る

<将来の「北海道新幹線」のターミナル、旭川駅を見てみよう>

さて、まずこの旭川まで新幹線を通す意味があるのかどうかでいえば、多く見積もっても約40万人規模の都市を新幹線で結ぶ投資効果は限られているように思えるが、ここではそうした当たり前の現実を全て楽天的に解釈して計画を進めることにする。
まずは現在の旭川駅を見てみる。

現在の旭川駅 
高架化する際に南側にあった操車場を廃止し、本線が南寄りに移動したことによって広大な駅前広場が誕生した

現在の旭川駅は2011年に全面開業したまだ真新しいものだ。この改装によって駅は全面高架化され、1つ札幌寄りの函館線近文駅からこれまた1つ名寄よりの宗谷線旭川四条駅の北約1km先まで高架線になっている。高架化によって旭川運転所が石北線の分岐点である新旭川の先、JR貨物・北旭川駅の旧貨物ヤード跡に移転したため、ここまでが複線電化区間となっている。
まだ積雪が残る早春の旭川駅前広場 
バスターミナル(左側)とタクシー乗り場(中央)、自家用車駐車場(手前の2階建ての建物)が整然と並ぶ
駅舎だけ見ると、空港ターミナルビルか最近できた新幹線の駅のような威容に圧倒される。4面7線の配置となったホームからは函館線岩見沢方面の普通列車に加え、札幌行きの特急がほぼ終日にわたって約30分おきに運転されるほか、名寄・稚内方面の宗谷線と北見・網走方面の石北線、北海道を代表する美瑛・富良野を結ぶ富良野線の列車が発着する。また一部の列車は深川から留萌線の留萌へ直通する。
なお2017年からは特急「宗谷」1往復「オホーツク」2往復が道北・道東方面と札幌方面へ直通する以外、すべての定期列車は旭川を起終点としており、名実ともに道北の拠点ターミナル駅として機能している。
主に札幌方面の特急が発着する3・4番ホーム  ホームは線路も含めて全て屋根に覆われている
プラットホームやコンコースを見ていると、今すぐにでも新幹線に乗れそうな気分になる。駅にはイオンモールとJR直営のホテルが直結しており、北海道でも飛び抜けて近代的、というより未来的なデザインで構成されている。
改札口につながるコンコースには何だかよくわからないが芸術的なアートが並ぶ

駅に直結したイオンも2015年に開業した
駅周辺は高架化によって再開発が進んでおり、前述のようにイオンモールやホテルをはじめとした商業施設や公共施設、マンション建設が進められているが、思ったように計画は進んでいないようだ。建造物などのハード面から見えるほど地方都市の問題は簡単ではない。ならば、なおさら新幹線への期待が高まってもいいような気がする。

 となると、これだけの都市規模を見ていると「新幹線を迎えようと思えば簡単なんじゃね?」

とつい軽々しく思ってしまう。
何より駅周辺に限らず、少なくとも旭川駅周辺の環境を見れば新幹線用地の確保は札幌ほど難しくなさそうだ。
では次からは本論である新幹線をどの方式でここまでつなげるか、つまり「フル規格」か「新在直通」かについて考える。
旭川駅南側を流れる忠別川側から駅を眺める 

<①フル規格で建設した場合>

Ⅰ.建設費は意外に安い?

どこで新幹線を建設する場合でも、「そりゃやっぱりフル規格でなきゃねぇ」と考えるのは当たり前だが、その莫大な建設費を投入するだけの価値があるかどうかはなかなか難しいところだ。それでも札幌・旭川間だけに限って言えば、かなりコスト的には安くなるのではないか?もちろん冬季の積雪対策を考えるとそれなりの設備投資は必要だが、現在の函館線が走るこの区間を見ると山岳地帯は旭川に入る手前にある神居古潭周辺ぐらいしかなく、ほとんどの区間は建造物の少ない農地が広がる平坦な地形の中を走る。したがってフル規格で建設しても長大トンネルをいくつも掘る必要はなく、北陸新幹線のように一部区間は地平でも良さそうだ。線路を通す場所を選べば高架を少なくできる上に、大きな鉄橋も石狩川を越えなければほとんど必要ない。さらに札幌周辺以外はほとんど市街地化された地域を通らない。その札幌地区で最も住宅が密集している札幌から厚別あたりでも、元々3複線区間がある上に苗穂や白石など車両基地や貨物ヤードが広がっているので、現在建設中の札幌駅西側よりははるかに新幹線用地は捻出しやすそうだ。
その点で新函館北斗・札幌間に比べて建設費はかなり抑えられるのではないか。

Ⅱ.早速線路を建設してみよう

ではコストも抑えつつ効果的かつ最も利便性の良い予定地はどこだろうか?
こうなったら早速旭川を起点に札幌まで新幹線のルートを決めてみよう。
現在の函館線は旭川駅を出たところでやや進路を北西方向にとって石狩川を渡るが、新幹線はそのまま直線的にほぼ西方向に進路をとって忠別川と美瑛川の合流点の先で美瑛川の本流を越えるのが妥当だろう。
あとは現在の国道12号線に沿う形で石狩川の左岸側を進む。実はこの辺りまでがかなりの住宅地なので土地収用には地元の理解がないと難しいところだろう。
神居古潭の山岳地は旭川市の高砂台付近からこの区間唯一の長大トンネル(延長12km程度)の「新神居古潭トンネル」(勝手な仮称)で深川市まで直線的に抜けると現在線よりかなりの距離短縮になる。
この先は道央道に沿うように一路滝川市を目指す。
旭川駅を札幌に向けて出発した特急「カムイ」
計画(?)ではこの画面左で手前を流れる忠別川を越えて神居古潭の石狩川左岸側を長大トンネルでぬける


ただしこのルートだと残念ながら現在の深川駅に新幹線の駅を作ることはできない。このままだと旭川の次は「滝川駅」ということになる。深川市周辺自治体の猛反対を受けそうだが、現在の深川駅のある深川市中心部に向かうためには北方向へ大きく迂回しなければならない上に、札幌に向かうには石狩川を2回渡ることになる。加えて深川駅と滝川駅を比べた場合、根室線の分岐駅である滝川に新幹線の駅を併設する方が富良野方面への利便性を考えても投資効果がある。
根室線の富良野付近を走る季節特急「ラベンダーエクスプレス」
滝川から根室本線を経由して札幌と富良野を結んでいる 
新幹線ができれば滝川・富良野間の観光列車が走るかもしれない
おまけに滝川市のすぐとなりは砂川市という比較的人口の多い街もあり新幹線効果がより期待できる。
ということで深川市にも新幹線の駅を設置するために、在来線から独立した「新深川」駅を道央道の深川インターチェンジ付近に作ることにしよう。(我ながらやりたい放題だ。)実際現状でも留萌線を廃止しようとしているのだから(賛成はできないが。)、高速道路網との連携ができる場所の方が新幹線の効果が得られるのではないか?
ということでもしこの位置に「新深川駅」を設けた場合、「旭川・新深川」間で約24km、「新深川・滝川」間が約21kmとなりそうだ。中間駅としては妥当ではないか?
滝川・江部乙間の菜の花畑を走る特急「ライラック 」
 新幹線はこの線路の反対(西)側に沿って建設する(妄想です)
さて滝川を出た新幹線は現在の在来線を超えて今度は函館線の西側に沿って一気に岩見沢方向へ進む。ということで新幹線「滝川駅」の次は「岩見沢」でどうだろうか。
ここでまた問題になるのは現在の特急停車駅である美唄駅の扱いだ。今の計画では美唄にも新幹線駅を併設することは可能だが、果たしてどの程度の需要が見込めるかだ。
あ、そういえばここでは「楽天的に」考える前提だったな。。
では「美唄」も止まることにするか。。。旭川・美唄間は約71kmだ。

さて「美唄」駅を出て引き続き岩見沢まで在来線の西側を進む。この区間全体を通して西側のほうが住宅など市街地が少なく、岩見沢駅も西側のほうが鉄道用地が広いので新幹線用地を確保しやすそうだ。
岩見沢駅西側に広がる「レールセンター」周辺の鉄道用地
現在の岩見沢駅の西にあり、在来線とセンターの間には広大な空き地が広がる

鉄道遺産でもある岩見沢のレールセンターの煉瓦造りの建屋
これも新幹線が開通した暁には観光資源となるのでは?


さて岩見沢の次は目的地札幌まで一気に進むが、この区間も基本的には在来線に並行して建設するが、石狩川が近づいてくる江別駅のあたりで空き地に余裕がなくなるので、今度は東側に転線する。ただし現在の森林公園駅あたりからはかなり住宅密集地に入ってくるので、この地区が最も用地確保に難儀しそうだ。場合によってはこの辺から白石付近まで地下線で札幌に向かうことも考えられる。
ただ厚別駅の先で千歳線と合流したあたりから札幌駅までは鉄道施設が連続しているので
この区間は在来線の配線見直しで乗り切ってしまえばいいのではないか。
札幌駅の東側、苗穂・白石方向を見る
画面ではわかりづらいがマンションの裏側を特急「カムイ」が旭川を目指して走っている 
新幹線はこの手前側に用地を確保できないか?
東京以北では最大の都市、札幌は新幹線を待っている
ということでめでたく札幌駅到着だ。このルートをyahoo地図でシミュレーションしてみたところ、建設延長は約127kmとなった。在来線と比べると神居古潭と深川市をバイパスしているだけなので、在来線ルートよりも10km程度の短縮にとどまる。それでも整備新幹線規格の最高速度時速260km、ノンストップで走れば札幌・旭川間は最速30分台で結ばれることになるだろう。もはや旭川は札幌の通勤圏内だ。中間の深川・滝川・砂川・美唄・岩見沢の各都市も札幌を中心とする北海道の巨大都市圏の一角として機能することも夢ではない。
ここまでくればH5系のロゴも正々堂々と北海道を自慢できるか?

Ⅲ.ところでどのぐらいの事業費が必要?

めでたし、めでたし。これで北海道も安泰だが、世の中そんなに甘くない。
ここからは総事業費を素人のいい加減さで見積もってみよう。国の試算によると現在建設中の新函館北斗・札幌間211kmの総事業費は1兆6700億円、1kmあたりに換算すると約79億円だ。これを基準に建設費を考えよう。
ただこの区間は総延長211kmのうち約147kmはトンネル区間だ。その上10kmをこえるトンネルが7本、そのうち渡島トンネルは32km、札幌市街地を一部地下線で抜ける札樽トンネルも26kmという全国トップクラスの長大トンネルを含んでいる。「馬鹿列車案」ではせいぜい旭川・新深川間に(勝手に)建設予定の延長約12km程度の「新神居古潭トンネル(仮称)」があるだけでこれ以上の長さのトンネルは不要だ。そのほかの区間でも一部トンネルを掘ったとしても、それ以外は高架線や平地、または丘の一部を切り通しで抜ければ良いことになっている。(これも勝手に。)懸念される札幌市東部から江別あたりまでの市街地をもし地下線で回避したとしても、その延長はせいぜい10km程度だ。それもJRの所有地も有効に使える可能性が高いので土地の買収費用も抑えられる。
したがって建設費や土木工事の困難さはかなり軽減されるだろう。そもそも全線を通じて地価は限りなく安いので(吊り上げられる可能性は大)本州で建設するのとはわけが違う。

そこで。
素人が勝手に考えた結果、地下線を建設した場合を想定して今の札幌都市圏の地価も一定程度考慮して少々多めに見積もった場合、その事業費は新函館北斗・札幌間の65%程度(1kmあたり約51.4億円)でどうだろうか。(ものすごくいい加減だが)この想定で算出すると事業費は
79億円✖️127km✖️0.65=約6521億円
となる。
時代が違うので単純に比較はできないが、20km級のトンネルを建設した盛岡・八戸間約97kmの総事業費が予算ベースで4565億円(1km=47億円)だったことを考えるとあながちデタラメでもなく、実は意外に安くできるような気がしてくる。また、開通した時代も、距離もこの計画に近い九州新幹線の新八代・鹿児島中央間でも計画上の事業費は6290億円(1km=45.7億円)だった。こっちはトンネルだらけの山岳新幹線だったことを考えれば、もしかすると旭川開業にかかる事業費はこれよりは抑えられるようにも思うのだがいかがか?となると意外に安くできる???

さあ、あとはこの建設費を日本国民が納得してくれるかどうかだ。そもそも大赤字のJR北海道が現在の整備新幹線のスキームできちんとこの区間(だけではない)の借金を返せるかが問題だ。これはどうにも致し方ない。そこを誰が負担するのか、あとはそこにかかっている。ソフトバンクかユニクロが中心になってクラウドファウンディングでもやってくれないかなぁ。全然足りないと思うが。。

では次回はもう少し現実的な「新在直通」いわゆる「ミニ新幹線方式」で開業を目指してみよう。(続く)